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【元保育士3人逮捕】宙づりにカッターナイフ…さくら保育園で虐待はなぜ起きた?保護者の反応などまとめ

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共働きの割合が増加する現代の子育て世代に欠かせない存在である保育園。

まだ明確な自己主張の難しい年齢の子どもを預ける行為は、相手への全幅の信頼がなければ成り立ちません。

今回の事件は、その信頼を根本から揺るがせてしまう凄惨なものでした。

保育士が行っていた「虐待」とは?毎日保育園で笑顔で過ごしていると信じていたはずの子どもに、一体何が起きていたのか?

一緒にみていきましょう。

虐待していた元保育士3人は誰?園長は隠ぺい行動?保護者の様々な反応などまとめ

自らの両手で目を覆う1歳児のモノクロ写真仕事など、親がずっとそばにいて安心・安全な生活を送らせてあげることができない。

共働きが増加傾向にある現代ではそんな家庭が当たり前で、保育園はその部分を補うための非常に重要な施設です。

ところが信頼して預けたはずの大事なわが子が、見えないところで毎日痛みや恐怖を与えられていたとしたら…?

人気保育園の内側で、園児の身になにが起きていたのでしょうか。

詳しくまとめてみました。

事件の経緯

2022年11月末日、耳を疑うようなニュースが飛び込んできました。

子どもを安心安全に預けられるはずの保育園で、3人の保育士による園児への虐待が行われていたことが判明したんです。その保育園の名は、私立「さくら保育園」

虐待されたのは保育園に通う1・4歳の複数の園児で、2022年6月から2か月に渡り、常習的に行われていたと見られています。

静岡県警は12月4日、当該の虐待行為について、さくら保育園で働いていた3人の元保育士を暴行容疑で逮捕しました。

逮捕された3人の保育士

  • 沼津市 三浦沙知容疑者(30)
  • 裾野市 小松香織容疑者(38)
  • 長泉町 服部理江容疑者(39)

市の公表から、わずか4日での家宅捜索に逮捕。このスピード対応は「園側の事実隠避工作による証拠隠滅のおそれがある」と判断されたため…と言われています。

この隠ぺいに関わる事実については、裾野市の村田市長が当該保育園の桜井利彦園長(53)を刑事告発していますね。

事件の時系列

  • 6月~:3人の(元)保育士による園児への虐待行為が常習的に行われる
  • 8月17日:園関係者より「不適切な保育が行われている」と市へ通報がはいる
  • 8月22日:園は「3人の保育士が(不適切な保育を)認めた」と市へ報告
  • 8月25日:園は市へ調査報告書を提出
  • 9月9日:3人のうち2名の保育士へ退職勧奨、1名をけん責処分(11月末に退職)
  • 10月下旬:園長が全職員へ誓約書の提出を強要
  • 11月16日:裾野市市長が園長と面談を行い、適切な報告を促す
  • 11月29日:保護者説明会(1回目)
  • 11月30日:裾野市が記者会見で当該事実について公表
  • 12月1日:保護者説明会(2回目)
  • 12月2日:保護者説明会(3回目)
  • 12月4日:静岡県警が元保育士3名を暴行容疑で逮捕
  • 12月5日:裾野市市長が園長を犯人隠避容疑で刑事告発

口コミや評判が良く、保護者からも人気の高かった「さくら保育園」。

保護者の目の届かない園内で、一体何が起きていたのでしょうか。

宙づり、閉じ込め、カッターナイフを「隠ぺい」?筆舌尽くしがたい虐待の実態

暴行容疑で逮捕された3人の元保育士が1・4歳の園児へ行っていた虐待行為は、口にするのもおぞましいものでした。

元保育士3人が行った16の虐待

  1. ロッカー内で泣く姿を私用の携帯で撮影
  2. 頭をバインダーで叩いて泣かせる
  3. 丸めたゴザで園児の頭を叩く
  4. 頬を叩いて無理やり泣かせる
  5. 給食を食べない園児を突然後ろから叩く
  6. 棚にはいった園児の足を掴んで宙づり状態にする
  7. 宙づりにした園児を真っ暗な排泄室へ放置
  8. 遅刻(連絡済)した園児に対し「遅いんだよ」と怒鳴る
  9. 園児を馬鹿にした呼びかけ(ブス、デブ等)
  10. 寝かしつけた園児に「ご臨終です」と何度も発言
  11. 昼食時に園児を怒鳴りつけて頬をつねる
  12. 日常的に特定の園児をにらみつけて声を荒げてズボンを無理やりおろす
  13. 手足口病の症状が出ている園児の尻を他の園児に無理やり触らせる
  14. 不適切な発言をして玩具をしまう倉庫へ閉じ込める
  15. カッターナイフを見せて脅す
  16. 園児を撮影した写真に不適切なコメント(身体的特長を揶揄する等)をつけて1歳児担当保育士のライングループで共有

どれも保育士がしていい行為…なわけがありません。

怒鳴られたり、叩かれたり、閉じ込められたりなんて、まだ自己主張もろくにできない園児たちは抵抗もできずに受け入れるしかなかったでしょう。とても怖かったはずです。

 

虐待行為のうち、カッターナイフで脅したのは4歳児、それ以外が1歳児や他年齢の園児相手に行われたことがわかっています。

「刃物で脅される」意味を理解できるほどには成長した4歳児に行っている部分が、なお悪質に感じられますね。

虐待の対象の多くが1歳児だったのは、虐待行為を行った保育士の担当が1歳児だったためのようです。

 

この虐待行為、実は8月時点で市は把握していました。当然、市としては適切な報告や対応を促しています。

しかし、さくら保育園の園長は報告を2ヶ月も放置するばかりか、その間に事実を隠ぺいしようとしていたんです。

犯人隠避では?といわれる園長の3つの行動

  1. 「口外・公言しないでくれ」と園長が内部告発した保育士に土下座
  2. 虐待を行った3名の元保育士以外の全職員に「園内の出来事を口外しない」旨の誓約書を書かせた
  3. 市への報告を2ヶ月近く怠り、事実の公表を遅らせた

この土下座について、櫻井園長は「入ってくれた保育士が辞めたことへの謝罪」と言っているそうですが、少々信じがたい発言ですね。

誓約書なども通常は入社時や入学時に書くものですから、後付けで書かせて意味があるのか…。書類を作る時間で市への報告書を作成できたのでは?と考えてしまいます。

 

数か月にわたる虐待行為に、保身を感じさせる犯人隠避行為。お世辞にも誠実とはいえない対応をした保育士と園長に、保護者や近隣住民からは様々な声があがっています。

園長や先生は本当は「優しい」人?保護者から聞こえる様々な声

虐待行為・犯人隠避行為が判明したさくら保育園の園長と3人の保育士へ、当然ですが保護者からは強い非難の声があがっています。

「虐待をした保育士当人が謝罪の場に出てくるべき」
「虐待被害を受けた園児を特定してほしい」
「自分の子どもが虐待を受けていたかもしれないと思うと許せない」

3回にわたる保護者説明会では、保護者から元保育士の出席が求められました。しかし、元保育士たちは説明会への出席を拒否。

さらに、出席できないならと謝罪の手紙を書くよう促しても

「状況がまとまらないので書けない」

と断ったことがわかっています。

謝罪の手紙1つでどうにかなるものでもありませんが、それでも誠意を感じる行動が1つもないのが恐ろしいですね。

 

この事件公表を皮切りに、保護者からは

「うちの子は食べるのが遅いために暗い部屋で食べさせられていた」
「暴言を言われたと子どもが言っていた」
「園を泣いて怖がって行きたがらない」
「一時期頬に青あざがあった。それも元保育士のせいでは」

と、園内の異常さが園児の様子から伺える声も複数あがっているようです。

 

また、犯人隠避行為で市長に刑事告発された櫻井園長についても、普段から不可思議な行動をとっていたことがわかっています。

「送迎時に耕運機に乗っているのを頻繁に見かけた」
「日中のほとんどの時間を畑で過ごしているように見える」
「畑にいすぎて園長先生に見えない」

ほとんど畑にいたということは、園児とすごす保育士にろくに目が届いていなかったのではないでしょうか。園長であれば、普段から園児の傍にいそうなものですが…。

園長としての責務は本当に果たしていたのか、疑問を感じます。

この事実が影響したかは不明ですが、さくら保育園を運営する法人は、理事長も兼務する櫻井園長を交代させる方針とのことです。

 

逮捕後、三浦・小松容疑者は「悪ふざけが常態化していた」と反省の色を見せていると報道されています。

しかし、三浦容疑者は正規で9年、小松容疑者は臨時(非常勤)で6年、服部容疑者は派遣で3年も働いていた事も判明。

ここ数か月で急に虐待行為が始まったとは考えにくく、余罪も含めてまだまだ騒動は続きそうですね。

 

一方で、驚くことに保育園へ子どもを預けていた保護者や近隣住民からは意外にも驚きや擁護の声があがっています。

「(小松容疑者)明るくて普通にやさしく、ほめてくれる良い人。息子さんが2人いる。」
「(小松容疑者)普段あいさつをすることがあるが、普通に明るい人」
「(服部容疑者)お子さんが3人もいる5人家族の優しいお母さん。こんなことが起きるなんて信じられない。」
「(櫻井園長)園へ行くたびに園長が野菜をくれた。にこにこして穏やかな人だと感じていた。」

直接会った人の印象は、そう悪くなかったようですね。

小松・服部容疑者については自らも子どもをもつ母親であると知る人が多かったでしょうから、なお驚く人が多いのかもしれません。

 

もっとも本当に「優しい」人であれば、今回のような悲惨な事件は起こりえなかったはず。

表向きの笑顔の裏で、どんな考えをもち、虐待行為に及んでいたのか…今後の報道が待たれます。

 

今回の事件で、さくら保育園に通園する171人の園児については「すでに転園先を確保できた」旨を裾野市が発表しました。

しかし、まだ1歳の子供が今回の事情を正確に把握するのは難しく、

「お友達と離れてしまう」「新しくて慣れない園はいやだ」

こんな風に感じる子どももきっと多いでしょう。

 

なんの罪もない園児たちに痛みや恐怖を与え、保育園そのものへの信頼を揺るがす結果をもたらした今回の事件。元保育士の逮捕で簡単に幕引き…とはならなさそうです。

今回の事件への声や意見

171人の1~4歳児を預かり、口コミも人気だった「さくら保育園」。

比較的規模の大きい保育園で起きた今回の事件は、当該保育園に限らず多くの保護者や園から怒りや困惑の声があがっています。

社会的弱者である幼い子どもを預ける行為は、信頼なくしてかなわないものです。今回の事件はその信頼を大きく揺らがせてしまったのでしょう。

誠実に運営し、子どもの健やかな成長を育んできた他の保育園にしてみればたまったものではありませんよね。

 

また、元保育士が虐待行為を行った理由として

「コロナで増えた業務や園児の対応に余裕がなく、ついやってしまった」

と話していることをうけ、

「国が定める保育士の配置基準に問題があるのでは?現代にあわせて更新すべき」

といった声もあがっています。

 

しかし、どんな言い訳や事情があっても、3人の元保育士と園長がしたことは許されていいことではありません。

全国の保護者に「保育園に自分の子どもを預けて大丈夫なのか」と思わせてしまったこと、これからしっかり償ってほしいですね。

保育士と保育補助の違いって?仕事や採用試験の違いなど調べてみた

「虐待をする保育士だなんて、本当に保育士の資格をもつ人だったのか?」

あまりに凄惨な状況に、こんな疑問を持つ人も多いようです。

 

結論からいえば、今回逮捕された3人の元保育士は正規・非常勤・派遣と働き方の違いはあれど、全員「保育士」のようでした。

保育士資格を持たずに保育業務に携わる人の多くは「保育補助員」と呼ばれますからね。

では、保育士と保育補助は実際どう違うのか?仕事内容や資格の有無、採用方法など詳しくまとめてみました。

保育士と保育補助の違い

①仕事の違いは?

【保育士】

  • クラス担任を受け持つ
  • 保育理念や目標などに沿った保育計画を作成・実践する
  • 保護者と適切なコミュニケーションを図る・相談にのる

【保育補助】

  • 保育資格保持者(保育士)の業務をサポートするのが仕事
  • 業務の内容や責任の範囲は保育園など施設によって異なる

有資格者である保育士をメインに保育業務はすすめられます。

担当を受け持った園児たちが成長や心身を支えるにはどのようなカリキュラムが必要か?

頭を悩ませ、体を動かし、積極的なコミュニケーションを図り…気力も体力も問われる責任の重い仕事です。

 

一方、保育補助はサポートなので施設や業務内容によっては子どもと関わる時間が少ないこともあります。

②資格は必要か?

【保育士】

  • 保育士資格(国家資格)が必須
  • 都道府県知事指定の保育士養成学校他施設で所定の課程・科目履修・卒業or保育士試験に合格orハローワークの職業訓練を受講して保育士試験に合格が必要
  • 年齢上限なし(最低入学年齢は18歳)

【保育補助】

  • 資格は不要(ただし保育園によっては条件付なことも)

保育士になるためには学校にせよ試験にせよ、多くの勉学(保育原理・保育心理学など)や実技(音楽・造形表現など)に励む必要があります。

人の命を預かるだけあって試験内容は非常に重く、平均合格率は20%前後。まさに国家資格とよんで恥じない資格になっているようです。

 

一方、保育補助は資格が全く必要ありません。

「業界未経験だけど、子どもに関わる仕事がしたい!」なんて人にも門戸をひらいているんですね。

在籍中に子育て支援員の研修を必須なところもあるので、応募前によく確認するとよいでしょう。

子育て支援員とは

2015年に保育業界の人材不足解消を目的に設置された資格です。地方自治体を中心に交付される民間資格で、20歳以上65歳以下の年齢制限が設けられています。

②③公立または私立の保育園に採用されるには?

【保育士】

  • 公立の場合、自治体の行う公務員採用試験の受験が必須(受験資格が自治体ごとに異なる)
  • 私立の場合、各採用試験を受験する
  • 形式は統一されていないが、どちらも筆記試験・実技試験・小論文・面接のほかに適性検査が含まれる

【保育補助】

  • 採用枠さえあれば公立・私立ともに応募可能
  • 書類選考・面接のみが多い

保育士として働くには、保育士資格取得で学んだ全ての要素を使って就職を勝ち取る必要があります。

適性検査(または性格検査)を行うかは保育園によりますが、費用もかかるので実施しない園も多いそうです。

万年人手不足な業界ですから、実際は面接で人となりをみて適性を図るところが多いのでしょう。

 

保育補助の場合は保育士として就職するわけではないので、公務員採用試験は不要です。

保育士資格も当然不要ですが、私立と比べて「資格者・勤務経験優遇」など追記した求人が多い印象ですね。

 

色々調べていくと、誰でもなれる保育補助と比べて保育士は国家資格や膨大な知識・経験を求められる仕事であることがわかりました。

今回の事件で逮捕された元保育士も、保育士資格をえるために多くの努力を重ねたはず。

必死の努力で来れた保育現場で、守るべき園児に虐待をしてしまったことは本当に残念でなりませんね。

まとめ

園庭を楽しそうに駆け抜ける園児たち今回の事件は、今保育現場で頑張る人にとっても、これから保育士を目指す人にとってもショックが大きいでしょう。

二度と同じことが起きないよう、もし今違うどこかで起きているなら改善されるよう願うばかりです。