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田村市の60代男性が死亡…アナフィラキシーショックの原因はハチ?事故現場やハチに刺されない方法まとめ

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澄み渡る青空、のぼる入道雲、灼熱の太陽…本格的に夏をむかえる8月、ある街で悲しい事故が起きました。

死亡事故はどのような状況で起きたのか、死因である「アナフィラキシーショック」とは?一緒にみていきましょう。

福島県田村市の60代男性の死因はアナフィラキシーショック?死因や事故現場について詳しくまとめました

草の先にとまるスズメバチ
「家族がハチに刺された」

まだ暑くなる前の過ごしやすい朝のひととき、その事故は墓地で起きました。草刈り中の60代男性がハチに刺され、命を落としたのです。

男性が命を落とす原因となったアナフィラキシーショックとは一体なんなのか?事故現場の街はハチの多い場所だったのか?詳しく調べてみました。

事故の概要

2022年8月7日午前7時50分頃、福島県田村市常葉町鹿山字関場にある墓地で60代男性が亡くなりました。死因は「ハチ刺されによるアナフィラキシーショック」。

郡山地方消防本部は、次のように話しています。

事故の概要

  • 60代男性は墓地で草刈りをしていた
  • 草刈り中にハチに刺され、アナフィラキシーショック(重症)を起こした
  • 男性がハチに刺されるのを目撃した家族により消防へ通報
  • 発見時には心肺停止状態、搬送先の病院(郡山市)で死亡
  • 8月7日・8日は他にも50~70代の男性4人(中等症2人・軽傷2人)が刺されて救急搬送された

アナフィラキシーショックが起きるとどうなる?

今回男性が亡くなる原因となった「ハチ刺されによるアナフィラキシーショック」とは、どんなものなのでしょうか。

 

アナフィラキシーとはアレルギー原因物質に触れたり、体内にとりこんでから非常に短い時間で出るアレルギー症状です。

症状は、皮膚・粘膜・呼吸器・循環器など複数の臓器または全身に出ます。短時間で急激に出た反応は血圧低下や意識障害も引き起こし、重症に至れば命の危機も…。

このアナフィラキシーにより命が危険な状態になることを「アナフィラキシーショック」と呼ぶんですね。

今回の事故は「ハチ(蜂毒)」に含まれるアレルゲンやヒスタミンが引き起こしたアナフィラキシーショックだったようです。

蜂毒によるアナフィラキシーショックは「二度目」じゃないと起こらない?
「ハチ刺されで起きるアナフィラキシーショックは『二度目』だとまずいんでしょ?私はまだ一度も刺されていないから大丈夫!」

これは正解であり、不正解でもあります。

一度刺されてハチ毒アレルギーを有した人が二度目に刺されると、重いアナフィラキシー症状がでる可能性があるので大変危険です。

一方で、

  • 刺される前からハチ毒アレルギーの人
  • 大量のハチ毒が短時間で体内へ入った

上記の場合は、一度目でもアナフィラキシーが起きる可能性があります。

蜂毒によるアナフィラキシーが一度目でも起こりうることは、頭にいれておきましょう。

蜂毒によるアレルギー症状は、他のアナフィラキシーと比べても反応時間がかなり早く、

  • ハチに刺されてから約15分以内に症状が出る
  • 症状は軽い痛みや局所的な腫れ・蕁麻疹・呼吸困難・意識障害など
  • 症状がでてから15分程度で心停止してしまう

と、刺されてから心停止するまでの時間が非常に短いです。運が悪いと数分で死に至ることもあります。

今回の事故も、消防が駆けつけた時点で男性はすでに心停止状態でした。

 

たった一度でも、症状の重さによってはわずか15分程度で死に至る可能性があるハチ刺されによるアナフィラキシーショック。本当に恐ろしいです。

福島県田村市はハチが出やすい地域だった?

事故の起きた当日・前日は、死亡した男性の他にも計4人がハチ刺されで救急搬送されています。田村市(他近隣市町村)は、ハチが特に出現しやすい地域だったのでしょうか。

 

福島県田村市は、福島県東部中央に位置する総人口33,917人(2022年7月1日時点)の街です。

総面積458.3㎢の約62%が山林であり、北に鎌倉岳・南東に大滝根山がそびえる阿武隈高知が市を南北に走っています。

市南部にあるあぶくま洞・入水鍾乳洞や昼も夜も楽しめる星の村天文台など、大自然をふんだんに活かした観光資源が特徴です。

ハチが巣を作り、増殖する傾向が強いのはエサ(昆虫)の多い山や森林。確かに自然が豊かだと、ハチが多く生息していそうです。

しかし、福島県は全体の70.6%が森林なため、県の大部分で「山林が多く、ハチが巣を作りやすい環境」といえるでしょう。

これは特定の市町村だけに該当するものではないですよね。

実際、福島県はHPでハチ刺されによる死亡事故について、県全体へ定期的に注意喚起を行っています。

ハチ刺され防止対策について

県内において、スズメバチ類に刺されて死亡する事故が発生しております。

ハチ刺されによる被害発生時期は、アシナガバチ類はおおむね7~8月で、スズメバチ類はおおむね7~11月です。

特にスズメバチ類は9月頃に巣の規模が最大になり、攻撃性が高まるため要注意です。

引用元:ハチによる刺傷防止のお知らせ‐福島県ホームページ

また、福島県の呼びかけのとおり、7~9月はスズメバチが最も活発に活動する時期です。

ハチは20~40度前後の気温で活動が可能。5月頃から女王バチが動きはじめ、8~9月に活動のピークを迎えます。

日本の夏の平均気温は毎年上昇しているとはいえ、まだまだハチが活動できる範囲内ですね。

では、田村市や近隣市町村は他の都道府県と比べて、特にハチが活動しやすい気温なのでしょうか。

2021年8月の平均・最高気温

  • 東京:平均27.4度・最高36.8度
  • 福島県田村市:平均24.4度・最高36.0度

東京の気温と比較しても、田村市の気温はかけ離れたものではないようです。「特別にハチが活動しやすい気温である」ことはないでしょう。

今回の事故で男性を刺したハチの種類は不明ですが、事故の起きた田村市は

  1. 山林の多い地域
  2. ハチの活動に適した気温

の2点を満たしていることがわかりました。この2つの条件を満たす市区町村は、全国に多く存在します。

 

田村市は特別にハチが活動しやすい地域ではないですが「同条件の他地域同様、ハチが活動できる地域である」とはいえそうですね。

今回のニュースへの声や意見

今回の死亡事故について、男性が亡くなった理由であるアナフィラキシーショックを心配する声が多くあがっています。

ハチ刺されは、万人に共通する日常の「危険」です。悲しい結果にならないよう、ハチへの正しい知識を身に着け、日々油断せずにいることが大切ですね。

【ハチに刺されないために】今日から実践したい5つの方法

木にひっつくスズメバチしかし、ハチの出現はいつだって突然なもの。

「突然鉢合わせる前に、刺されないための行動を知っておきたい!」

「突然遭遇したハチに刺されない」ためにできる行動をまとめてみました。

ハチに刺されないために実践したい2つの行動

  1. ハチを刺激しない
  2. 巣やハチ本体を見つけたら静かに速やかにそっと離れる

とにもかくにも、「ハチを刺激しない」ことが大前提!ハチは自分たちの巣を守るのに、常に全力です。巣やハチへ危害をなすものとみなせば、容赦なく攻撃してきます。

こちらの存在を「敵」と認識させないためにも、ハチが反応しやすいorハチを寄せやすいものをあらかじめ知っておきましょう。

ハチと遭遇しそうな場所では使わないことで、接触リスクを最小限におさえられます。

ハチが反応しやすいor寄ってきやすいもの

  • 純毛や黒色の衣料品
  • 超音波式虫よけ装置
  • 香り付き柔軟剤・洗剤・香水・化粧品などニオイを発するもの
  • 熟れた果物やジュースなど甘い飲食物
  • ひらひらした布

それでもハチと遭遇してしまった!そんな時は、落ち着いて以下の行動をとってください。

ハチや巣と遭遇した時にとるべき行動

  • ハチの巣やハチ本体の近くで急激な動作をしない
  • 巣の近くで急な動きをしたり、巣に振動を与える行動をしない
  • 巣を発見しても大声で出さない
  • 巣や攻撃的なハチに遭遇したら姿勢を低くして頭を隠し、ゆっくり後ずさる

大きな声や音、腕をふるような大きな動作はハチを刺激し、攻撃モードへ変えてしまうおそれがあります。

巣やハチ本体を発見したら騒がず、静かにその場から離れましょう。姿勢を低くすることでハチの視界や追撃を逃れやすくなります。

ハチは目の構造上、かなり視野が狭いです。特に上下は見えにくいため、姿勢を低くすることでハチの認識から逃れるチャンスがうまれます。

ただし、当人が香り付き柔軟剤や洗剤などのニオイをまとっていると、ニオイで見つかってしまうので注意が必要です。

怖いかもしれませんが、しつこいハチだと80m近く追いかけてくるため、大きな声を出さずにできる限り遠くまで離れましょう。

 

なお、万が一ハチに刺されてアナフィラキシーが出た場合は、次の対応が推奨されています。

もし、アナフィラキシーになってしまったら、まず、ためらわずに119番通報をして救急車を呼んでください。救急車が来るまでは、仰向けになって寝ているのが一番効果的です。足の下に枕などを入れて足を高くすると楽になることがありますが、急に起き上がったり、立ち上がったりするのは危険なので避けてください。

【引用元】アナフィラキシーショック(ハチ刺されに注意しましょう) – 一般社団法人 奈良県医師会

人生一度でも起きてほしくない出来事ですが、備えあれば憂いなし。万が一のために、普段から気を付けて行動しておきましょう。

まとめ

ぶら下がるお花の花粉を回収するミツバチハチもアナフィラキシーショックも、私たちの生活に常時ひそむ危険です。しかし、正しい知識をもち、不用意な行動をさけることで過度に心配・恐怖する必要はなくなります。

「まさか自分が…」と思わず、日々できることから着実に実践しておけるとよいですね。