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島津製作所子会社が医療用装置に回路遮断タイマーを設置!事件が『ソニータイマー』といわれる理由とは

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関西を代表する老舗メーカー「株式会社島津製作所」の子会社で、メーカーへの信頼を根本から揺るがすような事件が起きました。

人命を守るために欠かせない医療用装置に、装置の故障を誤認させるタイマーがわざと仕掛けられていたことが判明したんです。

島津製作所の子会社はどうやってタイマーを仕掛けたのか?この事件でざわつく声に散見する『ソニータイマー』とは?

詳しく調べてみました。

医療用装置は故障していなかった?無用な部品交換を促す「タイマー」の存在とは

真っ赤な砂が滑り落ちる砂時計医療用装置に限りませんが、設備や機器が大型・精密であるほど、メーカーによる定期的なメンテナンスが必要になります。

修理・交換など適切に対応することで、より正常に、長く使ってもらえることがメーカーの使命であり、評価にもつながるんです。

しかし、今回の事件はそんなメーカーのあるべき姿を真逆に突き進むものでした。

事件の概要

事が判明したのは、熊本市内の公立病院。

あるメーカーが病院へ納品した医療機器にタイマーが仕掛けられており、ありもしない故障を装った部品交換が行われていたんです。

そのメーカーの名前は、島津製作所。正確には島津製作所で作られた製品の販売・保守をうけもつ島津メディカルシステムズが本来必要のないタイマーを仕込んでいました。

【島津メディカルシステムズ株式会社の本社(新大阪第一生命ビルディング11F)】

納品した装置は、エックス線で体内を可視・撮影できるエックス線テレビシステムです。2009年に病院で設置されて以降、定期的に保守が入っていたと思われます。

 

2017年9月、島津メディカルシステムズの幹部社員がこの装置にタイマーを設置。一定時間後にタイマーが作動すると、正常な動作に必要な回路が遮断されてしまうものでした。

後日タイマーは作動し、病院は装置からエックス線が出なくなったのを確認。

よばれた幹部社員は主要部品(エックス線管球)を交換し、病院は保守費用として約228万を支払ったそうです。

 

意図的に回路を遮断させたわけですから、装置は本当は故障していなかったはず。

本来存在しない故障をでっちあげて保守費用を請求したわけですから、真実であれば当然不正行為にあたります。今まで積みあげてきた信頼を破壊する、とんでもない行為です。

この子会社のやらかしに対し、親会社である島津製作所は以下の文章を発表しています。

島津メディカルシステムズに関する一部報道について

本日一部の報道において、当社子会社である島津メディカルシステムズ株式会社(代表取締役社長:三浦嘉章、本社所在地:大阪市)に関する記事が掲載されましたが、これは当社が発表したものではありません。医用機器製品の販売・保守業務などを手掛ける島津メディカルシステムズでは、X線撮影装置に対するサービス提供において不適切な行為があったという疑義が生じています。この疑義を受け、現在、島津メディカルシステムズおよび島津製作所は、事実関係を明らかにするため、外部専門家も含めて客観的に調査を進めております。事実関係が明らかになり次第、然るべき対応を行なってまいります。なお、本件によって誤診や医療事故を生む可能性はございません。また、サービス提供における不適切な行為の疑義は、一部地域に限定されております。

お客様をはじめ多くの関係者の皆様にご迷惑ならびにご心配をおかけする事態になりました事、心よりお詫び申し上げます。

【引用元】[SHIMADZU] 島津メディカルシステムズに関する一部報道について | 2022年 | ニュース | 島津製作所

当該の幹部社員は主要部品を交換するタイミングでタイマーを回収した疑いがあり、何もなければ事実は露呈しなかったでしょう。

「不正の疑いがある」と島津製作所と子会社が情報を得たそうなので、気づいた誰かが内部通報したのかもしれませんね。

今月25日には親・子両社から病院へ謝罪、現在は複数人から事情を聞き、事実関係を確認しているとのことです。

島津製作所はどんな会社?

今回の事件が起きた子会社を抱える島津製作所とは、どんな会社なのでしょうか。

島津製作所は1875年3月創業、京都府京都市に本社をおく製造企業です。従業員数13,499名で、2025年には創業150年をむかえる老舗大企業なんですね。

主な事業内容

  • 分析計測機器
  • 医用機器
  • 産業機器
  • 航空・海洋・磁器計測機器

社是を「科学技術で社会に貢献する」とするとおり、医療やエネルギー、環境や素材など幅広く貢献しています。毎年増収増益を達成、関西を代表する日進月歩なメーカーです。

元より有名な島津製作所ですが、2002年に同社研究所の田中所長がノーベル化学賞を受賞したことは世界的なニュースになりました。

現役サラリーマンの身でノーベル賞を受賞した人もいた。2002年に化学賞を受賞した田中耕一さん(59)だ。当時、田中さんは京都市に本社がある島津製作所の従業員(現在、同社シニアフェロー)。現役サラリーマン初の受賞と話題になった。

【引用元】【ノーベル賞】02年化学賞の田中耕一氏在籍 島津製作所は大腸がんで注目|日刊ゲンダイDIGITAL

一方、2013年・2017年と二度に渡って防衛省から指名停止処分を受けている会社でもあります。

指名停止の原因は、どちらも過大請求。2013年は本来存在しない作業時間を、2017年は不適切な部品交換の分を上乗せして請求していたんです。

島津製作所は9日、防衛省から受注した輸送機などの補助動力装置の修理で不適切な部品交換があったと発表した。防衛省は9日から9月22日までの3.5カ月間、同社を指名停止にすると通知した。今回の指名停止措置による業績予想の修正はしない。

同社は「関係者に多大なご迷惑をおかけしおわびする。コンプライアンスの徹底を図り、再発防止に努めていく」とコメントした。同社は2013年にも戦闘機などの修理で過大請求し指名停止となった。この際は違約金など約216億円を国庫に納付した。

【引用元】島津製作所を指名停止 防衛省、不適切修理で: 日本経済新聞

この2件に関しては、すでに指名停止を解除されています。しかし、費用の水増し請求も回路遮断タイマー設置も、1人の社員が独断で行える規模の不正ではないですよね。

 

歴史ある大企業で起きた組織内でしか知りえない意図的な故障…この内容から、SNSなどでは

「悪意ある『ソニータイマー』」「『ソニータイマー』って本当にあったんだ」

などの声が上がっています。

『ソニータイマー』とは

『ソニータイマー』とは

  • メーカー保証期間(1年)を超えて使用したソニー製品は1ヶ月ともたずに故障してしまう。
  • その理由は、メーカーであるソニーが製品寿命を保証期間程度にコントロールするタイマーを仕掛けている(あるいは精密に寿命を調整している)ためである。

という「都市伝説」です。

ソニーが自社製品に時限爆弾を仕込むことで故障を誘発し、不要な買い替えや修理を促しているのではないか?という内容ですね。

もちろんこれは「ネタ」であり、実際にソニーが自社製品に不良部分を組み込んで販売、意図的に故障させていることはありません。

そんなことをしても、メーカーとして、企業として、なんのメリットもないですよね。少し考えれば、現実にはありえないとすぐにわかる都市伝説です。

では、なぜ『ソニータイマー』の存在がまことしやかに囁かれるようになったのでしょうか。

 

ソニータイマーが話題になり始めた1970年代後半は、海外製品との競争が熾烈を極めていた時期でした。

ソニー製品は一定期間使い続けると不具合が起こりやすく、その旨をユーザーから指摘される際に生まれた言葉だと言われています。

ソニータイマーでは?と揶揄された事案

  • PS1のレール摩耗による読み込み不具合
  • PS2のピックアップレンズ故障による読み込み不具合
  • PSPのボタンが戻らない不具合
  • 薄型テレビ『ブラビア』Eシリーズが累積視聴時間1200時間でテレビの電源が切れなくなる不具合
  • ソニー製バッテリー内蔵のDell製ノートPC他960万個以上がリコール(異常発熱) etc

実際の原因はソニー側の技術的な問題であることもあれば、海外製の部品に不良品が多かったなんてこともあったようです。

いずれにしてもソニーはその都度適切な対応を行い、50年経った今でもイメージを払拭するための取り組みを続けています。

「意図的に故障を引き起こす仕込みなんて不誠実な真似をするメーカーが本当に日本に存在するのか」

ありえない「もしも」ジョークが、たまたまタイミング悪く重なった不具合によって多くの人に印象付いてしまった。

これが『ソニータイマー』が世間で広く認識された原因と考えられるでしょう。

 

そして、本来ありえない「もしも」を本当に実践してしまったかもしれないのが、今回の島津メディカルシステムズの件なんですね。

今回の事件への声や意見

まさか本当に『ソニータイマー』という都市伝説を実践するメーカーが存在するとは…。と、驚きや呆れの声が多く上がっています。

仕掛けられた機器が人命を守る医療用装置であるという事実も、批判の声を強める原因となっているようです。

詳細は親会社で確認するとのことですし、この機会に洗いざらい膿を出し切り、今後二度とないようにしてほしいですね。

意外とある!?日常生活にひそむ身近な「都市伝説」

内緒話にいそしむ2人の女の子今回の『ソニータイマー』のように、私たちの生活と身近な都市伝説は他にも存在します。

せっかくなので、誰もが触れる機会の多い家電にまつわる都市伝説を2つほど紹介していきますね。

テレビの『砂嵐』は冥界への入口!?

「テレビは一家に一台」が当たり前な現代。誰しも1日1度は目にするであろうテレビには、こんな都市伝説があります。

テレビに映った砂嵐を見ていると、死人が映る

深夜、ふとテレビをつけると画面に映るのは白と黒のドットが混じりあいうごめくような映像…そして砂が流れるようなBGM…。

いわゆる「砂嵐」とよばれるテレビの映像、一度は見たことがありますよね。

砂嵐が映るブラウン管テレビ

正式には「スノーノイズ」とよぶ現象で、テレビが放送の電波を正常に受信できない(また受信する電波がない)時に発生します。

強風で受信が安定しない時や放送番組がない深夜帯に多い砂嵐はどこか人の心を不安にさせるようで、さまざまな噂がありました。

砂嵐にまつわる都市伝説

  • 砂嵐を眺めていると命を落とす
  • 砂嵐を眺めていると画面に吸い込まれる
  • 砂嵐の中に死人が映る
  • 砂嵐には死者のメッセージが紛れ込んでいる
  • 砂嵐は死後の世界につながっている
  • 人名リストが表示された後「明日の犠牲者は以上です おやすみなさい」のテロップが流れ、実際に人名リストの人間が翌日の新聞のお悔み欄に載っている etc

なんともホラーな感じですね。主に深夜に発生するため、怪談やオカルト要素との相性がよかったのかもしれません。

実際にホラー映画の演出や題材として起用されたこともあるようです。

一方で、砂嵐や風・雨の音は「ホワイトノイズ」とも呼ばれ、一定のヒーリング効果があるとも言われています。

胎児の時に聞く心音などに似ているそうで、赤ちゃんを泣き止ませたり、大人がリラックスして眠りにつく効果が期待できるようです。

音だけの印象と、映像を伴う印象で全然変わってくるのは面白いですね。

 

なお、この都市伝説は現在再現不可能となっています。理由は、砂嵐が発生するアナログ放送が2012年3月31日をもって終了したため。

砂嵐はアナログ放送を正常に受信できない時に起こる現象なので、地上デジタル放送に移行した現在見かけることはありません。

どうしても見たい人は、地上デジタル放送移行以前(または前後)のテレビであればアナログ切替機能がついています。お手元にあれば、是非試してみてくださいね。

家電の『故障連鎖』は何かのメッセージ!?

冷蔵庫が壊れた!と思ったら、洗濯機もテレビも!?同時に壊れるなんて!

同じ家電を使っているわけじゃないのに、何故か同時期に壊れて修理・買い替えするはめに…。そんな経験、不思議と一度はあるのではないでしょうか。

長年使い続けた身近な家電たちが次々と壊れる現象に、多種多様なメッセージ性を感じる人は少なくないようです。

  • 人生の転機が訪れる前兆
  • 身の危険を知らせるサイン
  • 守護霊の影響
  • 「身を清めろ」というお達し
  • 金運向上の前兆
  • 不幸や不運を肩代わりしてくれた結果
  • 自分のエネルギー(波動?)が不安定 etc

家電が次々に壊れるのは、本当に何かしらのメッセージが届いた結果なのか?

調べた結果、これもまた「都市伝説」の1つであることがわかりました。

 

日常生活で家電を購入するタイミングって、実は結構限られています。

  • 引っ越しなどにあわせて新規購入
  • 古い家電が壊れたので買い替え

おおよそ、この2つのタイミングです。電動コーヒーミルなど小物家電であれば、気が向いた時に買うかもしれませんが、同じノリで冷蔵庫や洗濯機は買わないですよね。

自然と同時期に買いそろえられた複数の家電は、同じ環境・同じ時間を過ごし続けます。すると、当然どの家電に内蔵されるコンデンサの寿命も同じように消費しつづけることに。

コンデンサとは
  1. 蓄電・放電
  2. 直流を遮断し、交流電流を通す

上記2つの役割を担う電気部品の1つ。電気を効率よく使うために必須な存在で、世の電気製品全ての基本となる非常に重要な部品です。

コンデンサは中に電解液がはいっており、電解液は時間経過でじわじわと蒸発していきます。

この量がコンデンサを正常に維持できないほど少なくなった時、電源がつかなくなり、家電は寿命をむかえるんです。

そして、電解液の蒸発速度はどの家電内のものでもさほど変わりません。

これが「家電が同時期に壊れやすい」原因なんですね。

家電の使用環境や状況によっては、電解液の蒸発速度が変わることも考えられます。

  • 通気口にホコリがたまりがち(うまく排熱できずに家電内温度が上昇)
  • 家電を置く場所の気温がすごく高いor低い

家電を長持ちさせたい人は、まめな掃除や室温の調整を気にしてみるとよいでしょう。

複数の家電が同時に壊れると、お財布にも響くし、買いに行く手間もあって大変ですよね。

そのしんどさから

「家電がいっぺんに壊れたのは、なにか得体のしれぬ理由があるからでは」

と考えたくなる気持ちが、この都市伝説を生み出したのかもしれません。

まとめ

医療機器の画面を真剣に眺める女医「製品を多く頻繁に買ってもらえれば、メーカーは儲かる」。

それは確かかもしれませんが、同時に信頼や実績を伴っていけなければメーカーとしての誇りも未来もあったものではありません。

国内メーカー全体の信頼を守るためにも、今後同様のことがないよう願うばかりです。