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バスに5時間!3歳児置き去りはなぜ起きた?炎上した園の対応と子どもを守るためにできる方法まとめ

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変わらぬ毎日が、続くはずの幸せな毎日が、ある日突然失われたら。

子どもを持つ親もそうでない人も、誰もが目を覆いたくなる悲惨な事件がまた起きてしまいました。

3歳の女の子の身にいったい何が起きたのか?事件後に「大炎上」した園の対応とは?

一緒にみていきましょう。

3歳の女の子はなぜ幼稚園バスに5時間取り残されたのか?原因は園のずさんな管理体制か

バス後方座席からの景色わずか3歳の女の子が、亡くなる事件が起きました。それも、見慣れた幼稚園バスの中、5時間も灼熱の高温にさらされ、逃げ場もなく息絶えたのです。

女の子はなぜバスに取り残されたのか?なぜ誰も彼女の存在に気づけなかったのか?

詳しく調べていくと、事件の原因と信じられないような園の対応が浮き彫りになってきたんです。

事件の経緯

2022年9月5日、誰もが耳を疑うような悲劇が起きました。

幼い子どもたちが毎朝乗る幼稚園バスに1人の女の子が取り残され、誰にも見つけられないまま亡くなってしまったのです。

女の子の名前は、河本千奈(ちな)ちゃん。まだ、たった3歳でした。

 

当日朝、千奈ちゃんはいつもどおり静岡県牧之原市静波にある川崎幼稚園の送迎バスへ乗車。

8時50分頃に幼稚園到着後、通常であればバスから降りて幼稚園へ向かうはずでした。

しかし、この日はなぜかバスから降りず、その後約5時間送迎バスに乗ったまま。午後2時10分頃、園近くの駐車場に停められたバスの中で発見されました。

発見時の状況

  • 心肺停止状態(後に重度の熱射病が死因と判明)
  • 体温は40℃程度
  • 上半身の服を脱いでいた
  • 所持していた水筒の中身は空
  • 乗車時のイスから離れた場所に倒れていた
  • 5日の最高気温は30.5℃
  • バスは屋外駐車場に停められていた

熱射病とは
高温多湿の環境下で長時間動いたり作業をした際に、大量の汗をかき、体内の塩分や水分が著しく不足すると体温をコントロールする脳の体温調節機能に支障をきたし、重度の意識障害が発症した状態を熱射病といいます。熱射病は、意識障害と同時に体温が40℃以上まで異常上昇します。その際、脳の体温調節機能が働いていないため、体温が異常に高いにも関わらず、発汗がなく皮膚が乾燥しているいるのが熱中症との大きな違いで、緊急に冷却療法を行う必要がある生命の危機に直結する極めて危険な状態です。

【引用元】熱中症・熱射病について | 三鷹 内科 みたかヘルスケアクリニック

園児の命をあずかる幼稚園という場所で、なぜこのような事件が起きてしまったのでしょうか。

千奈ちゃんはなぜ車内に「置き去り」になったのか

千奈ちゃんは、なぜ「熱射病で亡くなるまで車内に置き去り」となってしまったのか。事件当時の状況を整理してみました。

事件当時の状況

  • 毎日幼稚園バスに乗るのは千奈ちゃん含む園児6名・運転手・幼稚園スタッフ1名(70代)
  • 5日はいつもの運転手が急遽休みとなり、代理で増田理事長(73)が運転手に
  • 乗車時の名簿をもとに園児6名分を出欠管理アプリに「出席」で登録
  • 下車時に人数確認のダブルチェックをせずに、降りた園児のみと登園
  • 朝の会でも出欠確認はせず、不在に対する疑問を誰ももたなかった
  • 午後2時10分頃、再び園児送迎の準備をする際に千奈ちゃんを発見

これらの状況から、園が園児たちの出欠をろくに確認していなかった様子が読み取れます。責任をもって幼い命をあずかるはずの幼稚園にあるまじき事態に、

「車内に園児がいる状況で、園の人間が車の鍵を閉めるなんてありえない」
「園児の出欠名簿が事実と合わないことに気づけるチャンスはあったはずだ」

といった声が、事件の報道が流れると同時に強くあがりました。当然ですよね。

 

川崎幼稚園は千奈ちゃんを置き去りにしてしまった原因について、9月7日の記者会見で次のように説明しています。

  • 『園児全員の下車確認』の決まりが運転手・スタッフに伝わっていなかった
  • バス内に園児が残されていないか確認する決まりがなかった
  • クラス補助がアプリに登録した出席状況を確認していなかった
  • クラス担任がアプリ上「出席」にも関わらず、千奈ちゃんの不在を保護者へ問い合わせなかった
  • 上記4つの事情があわさり、誰も千奈ちゃんの登園を確認しない状況がうまれてしまった

つまり、園では「預かった園児の所在をきちんと確認しないまま保育を行っていた」ことになります。

本来、保育現場は園児と向き合い、体や心ののささやかな変化も読み取って健やかな成長を手助けしていく場です。

それが登園すら確認しなかったとなると、事件以前から園児の様子をちゃんと見ていなかったのでは?という疑念も浮かびます。

なんにせよ、今回の事件は園の管理不足や責任感の欠如が招いた悲劇といっても過言ではなさそうですね。

 

また、千奈ちゃんが発見された幼稚園バスそのものにも、置き去りにしてしまった一因があるのではと声が上がっています。

「幼稚園バスのラッピングが窓を覆っていなければ、もっと早く気づけたのでは」

当時千奈ちゃんが発見された幼稚園バスは、動物のイラストが描かれたラッピングが施されていました。

このラッピングは運転席付近以外の窓を覆っており、車内が見えづらく、遠目に中の様子を伺うことはまず不可能です。

幼稚園バスの窓になんらかの装飾がしてあること自体は、けして珍しいものではありません。「園児が喜んでくれるから」という園側の判断に悪意はないのでしょう。

しかし、バスの中を外から見えづらくするなら、なお乗降時の確認を怠るべきではなかったのではないでしょうか。

 

千奈ちゃんはわずか3歳ながら

「バスに乗る園児の中で一番家が近いから(奥の方に座って)最後に降りなさい」

という両親からの言いつけを、事件当時も守っていた可能性があります。

両親の言葉を守って下車時に職員の声を待っていたとしたら。しかし誰にも声をかけられず、外の景色も見えないバスの鍵は閉められ、たった1人残されたとのだとしたら。

千奈ちゃんの不安や恐怖は、計り知れません。

なぜ笑う?園の会見が大炎上した理由

事件を起こした川崎幼稚園(静岡県牧之原市)は、7日午前に保護者説明会を行いました。

保護者説明会は園に通う保護者が参加する場なので、マスメディアは入れません。しかし、今回ばかりは参加していた方がよかったのでは?と思ってしまいます。

なぜなら、約110人の保護者が参加した説明会中に保護者7名・保育士6名が救急搬送される事態が起きたからです。

 

説明会の場にいた人によると、最初は千奈ちゃんのお父さんが話している最中。

最前列席の保護者が過呼吸に陥り、さらに席の近い保護者や室外待機していた保育士も次々と手足のしびれなど訴えました。

「こんな幼い子が、なんて苦しい目に。辛すぎる」
「一歩間違えれば自分の子が同じ目にあっていたかもしれない」

説明会会場内は千奈ちゃんや想って泣き叫ぶ人や対話が難しくなる人もいて、かなりパニックに近い状況だったと考えられます。

しかし、それでも保護者や保育士が集団で倒れるなど、めったにないことです。いったい何が原因で、保護者説明会で救急搬送される人が出る事態になったのか。

 

同日午後に行われた記者会見は、その原因が透けて見えるような内容でした。

記者会見は、初めに増田理事長の謝罪で始まります。

「このような大変悲しい事故が起こってしまい、その原因は我々の安全管理がきちんとできていなかったという点にあったことを認めた上で、まずは原因の究明に努めてまいりたいと思います」

【引用元】会見でヘラヘラ笑いの“園児置き去り死亡”幼稚園にネット大激怒「はらわたが煮えくり返る」(女性自身) – Yahoo!ニュース

その後、記者からの質疑応答が約2時間行われましたが、ここが問題でした。

増田理事長は記者からの質問に対し、次のように答えていきます。

増田理事長の発言

  • 臨時の運転手なので業務に不慣れだった
  • バス全体を確認せずに運転記録作業をしてしまった
  • 送迎後に用事(病院にいく)があったので焦っていた
  • 年齢のこともあり、次やるべきことを忘れてしまう
  • 入園してまもない園児の顔と名前は覚えていない

言い訳や開き直りともとれる回答内容、聞き取りづらいボソボソ声、緊張感のない表情。

当時各局で中継された記者会見を見ていた他人の私でも「事の大きさを理解しているのか?」と感じさせる対応でした。

 

さらに、記者会見中の増田理事長・杉本副園長の態度も物議をかもす原因の1つとなっています。

  • 千奈ちゃんの名前を何度も「チナツちゃん」と間違える(園長)
  • 記者の質問に対し、へらへら笑いながらの回答(園長・副園長)
  • 猛暑の車内で熱射病により死亡した千奈ちゃんの会見で「睡眠と水分不足で喉がカラカラです。私も人間なので」と発言(園長)

入園したてとはいえ、己の管理不足で死なせてしまった千奈ちゃんの名前を会見で何度も間違える。

服を脱ぎ、水筒を空にしてまで生きようとした園児の状況を知りながら、声が聞こえにくいという記者の質問に逆切れのような発言。

責任をもってあずかったはずの命が失われたことを報告する場で、頻発する笑顔…。

 

理事長兼園長・副園長の立場でありながら、あまりに誠意も責任感も感じない発言に「まるで他人事」と非難が殺到しました。

誰がみても、わずか3歳の命を失わせた自覚があるようには見えなかったのでしょう。

へらへら笑いの園長・副園長と、痛いほど事の重さを理解する保護者や保育士。保護者説明会での出来事は、その温度差から生じたものだったのかもしれませんね。

今回の事件への声や意見

送迎バスによる園児置き去り死亡事件は、およそ1年前の2021年7月末にも起きています。

その時も多くの反響を呼んだにも関わらず、今回の事件が起きてしまったこと。

また保護者説明会や記者会見の内容もあいまって、事件を知った人からは多くの怒りや悲しみの声が上がっています。

大切な子どもの命を預けられるのは、ひとえに保育施設への信頼があるからこそ。その信頼が実は根本から存在しなかったとすれば…そんな恐ろしい話はありません。

どんなに後悔しても、失われた命は二度と戻らない。同じ悲劇を繰り返さないためにも、明確かつ効果的な対策が必要です。

「置き去り」から子どもの命を守れ!今すぐ実践できる1つの約束事

車のハンドルを両手でにぎる男性悲しいことですが、人間に「絶対」はありません。どれだけ危機感をもっても、責任感があってもなくても、失敗はある程度起きてしまうものです。

今回の事件に限らず、子どもの車内置き去り事件は過去にも起きています。これからの世界で、悲しい事故・事件を防ぐには今までにない対策が必要です。

 

欧米では、ヒューマンエラーから子どもたちを守るために「幼児置き去り検知システム」の導入をすすめています。

日本でも輸入製品や自社開発など同様のシステム導入の動きはでていますが、普及するにはまだ時間がかかるでしょう。

今回の事件を受け、幼稚園など保育施設では「幼児でも今日から実践できる」として以下の指導を園児へ実施する動きがでてきました。

車内に一人残されたら、車のクラクションを鳴らせ!

小さな体ではどんなに大きく声を出したところで、車外に存在を知らせるには足りません。

幼い子どもでも可能な操作で、かつ車外に強く存在を知らせるにはクラクションを活用する方法が最も適切だと話題になっています。

幼児の力ではクラクションを鳴らせない場合もありますが、

  • 両手に体重をかけて押す
  • 水筒で押す
  • お尻で押す(思いっきり座る)
  • 足で踏む

などの工夫で鳴らすことが可能です。

クラクションの鳴らし方について前もって大人と一緒に練習したり、水筒で押す方法など伝えておくと良いでしょう。

一方で、

このような車両の場合、3歳程度の幼児ではクラクションを鳴らすことは難しいでしょう。

そのようなケースも想定して、

  • 財布など貴重品を後部座席に置く
  • 防犯ブザーを常に持ち歩かせる
  • チャイルドシートの外し方を教えておく
  • ハザードランプのつけ方を教えておく
  • 運転席のドアロック解除方法を教えておく

など、クラクション以外にもできる対策を実施しておきたいところです。

 

幼児置き去り検知システムの普及までは、とにかく「車から脱出する」「自分の居場所を知らせる」方法を強く浸透させていきたいですね。

まとめ

バス内を駆け抜ける少年幼児は、自分の力で自分の命を守ることがまだできません。

取り返しのつかなくなる前に、私たち大人が「やりすぎかも」と思えるくらいの対策を念入りにしていくことが大切だと感じました。

9/14追記

今回の事件を受けて、政府は次の対応を行っています。

  • 全国1万箇所の保育施設にある通園バスの緊急点検を実施
  • すべての通園バスに安全装置設置を設置、設置には国から補助金を出す方向で調整

義務化についてはまだ検討の段階ですが、ぜひ推し進めてほしいと思います。