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100%が2%!?人気飲料メーカーの「メロン」飲料はなぜ景品表示法違反になったのか

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日本は他国と比べて「性善説が強く浸透している国」と言われています。

忘れた財布が無事に戻ってくる。災害時でも順番を守る。「悪いことを考える人はそう多くはないし、自分も相手を信じなければ」

良くも悪くも、私たちの生活に強く根付いているこの考え方。中でも、こと企業に対しては盲目的にこう考える人は多いのではないでしょうか。

「企業が客をだますわけがない」
「企業が出してくる情報は正しい」

こんな昔ながらの考え方に、待ったをかけるような事件がありました。

メロン味のジュースはどうして「景品表示法違反」になってしまったのか?一緒にみていきましょう。

実は2%だけだった!「100%メロンテイスト」が景品表示法違反になった理由

四角く切られたメロン果実をふんだんに感じられる100%果汁のジュースは、年齢性別問わず人気ですよね。

しかし、そのジュースに「期待外れが起きやすい仕組み」があるとしたら?

「100%だと思ったのに2%だった」という言葉が指し示す、ある違反とは?景品表示法ってどんなもの?

詳しく調べてみました。

事件の概要

2022年9月6日、日本を代表する清涼飲料水メーカー「キリンビバレッジ株式会社」が消費者庁より措置命令を受けました。

措置命令の対象となったのは「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」。美味しそうなメロンのイラストを全面に押し出したパッケージが特長ですね。

措置命令の理由は、このパッケージ表示が景品表示法違反(優良誤認)に当たるため。実際には2%しかメロン果汁が含まれなかったにも関わらず、パッケージに

  • 「厳選マスクメロン」
  • 「100% MELON TASTE」

と表記するなど、あたかもメロン果汁が原材料の多くを占めると誤認させるような表示をしていたことが原因です。

優良誤認とは
  1. 実際よりも著しく優良なものだと思わせるもの
  2. 事実ではないのに競合他社より著しく優良であると思わせるもの

上記のいずれかに該当することで、消費者の合理的な判断や選択を阻害するおそれがある表示を指します。故意・過失は限定されません。

景品表示法とは?

消費者庁が措置命令を出す理由となった「景品表示法」とは、どんな法律なのでしょうか。

景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。長いので、景品表示表や景表法と略されることが多いようです。

景品表示法の概要

  1. 誇大広告や虚偽表示など消費者が正しい情報をえられない不当表示の禁止
  2. 消費者の判断を阻害しかねない過度な高価・豪華景品の提供の禁止

文字通り「不当な景品や表示を禁止する」ことで、消費者が正しく判断・選択できるくらしを守る。

消費者を守るため、また企業の行動を適切な状態に抑制するための法律なんですね。

この法に基づき、消費者からの通報を受け、違反する事業者へ措置命令や課徴金納付命令を出す権限をもつのが消費者庁になります。

今回の事件でメスがはいったのは食品でしたが、景品表示法は食品に限らず全ての商品・サービスへ効力が及びます。かなり幅広く対応してくれるんですね。

該当飲料はどうあるべきだったのか?企業の対応は

「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」は、本来4種類の果実がブレンドされたジュースです。

原材料名に

果実(ぶどう(アルゼンチン)、りんご、バナナ、メロン)/香料、酸味料

【引用元】100% まるごと果実感 メロンテイスト | 100% まるごと果実感 | 商品紹介 | トロピカーナ Tropicana

とあるので多く含まれるぶどうやりんごがパッケージ上小さいのは、確かに企業として誠意ある広告とはいえなさそうです。

なぜメーカーであるキリンビバレッジは、実際に伴わないパッケージのまま販売してしまったのでしょうか。

憶測の域はでませんが、メロンは「高級さ」の印象が強い果物。悪意があったわけではないでしょうが、その高級感を押し出した方が売上につながると考えたのかもしれません。

しかし、現代は良くも悪くも情報社会。パッケージと中身が合致しない違和感に気づく購入者は以前からいたようです。

100% メロンテイスト まるごと果実感 厳選マスクメロン ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ こんな風に書いてあって、 マスクメロンの写真がパッケージにバーンと出ていたから、てっきり 『マスクメロンのみ』で出来た果汁100%のメロンジュースかと思って購入したら、 飲んで見て・・・?ん? 思っていたメロンジュースとは 違う…。濃縮還元だからかな…? これメロンなの? メロンジュースと言うより、 メロンの皮の味のジュース? ん〜、パッケージを今一度良く確認したら、『果実ミックスジュース』 と記載有り。 原材料名:ぶどう りんご バナナ メロン ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ え〜!! メロンのみのジュースじゃ無いんだ〜!! よくよくパッケージの写真を見ると、メロンだけで無く、バナナ、りんご、ぶどうの写真も有りました。 完全に思い込みで購入してしまいました…。がっかりです。マスクメロンのジュースかと思って期待して購入してしまったので。 それにしても、勘違いしやすい パッケージの【ミックスジュース】 です‼マスクメロンのジュースでは 有りません。勘違いしたのは…私だけかな?? お高い【ミックスジュース】でした。もう買わない(泣)

女性 / 50代 / 埼玉県 / 購入回数: 1回

 

メロンのフルーティーで甘い感じを想像していたら、瓜感が…きゅうり入れた?という感じでした。 メロンが大好きでトロピカーナの中でもメロン味はあまり見かけないので喜んで買いましたが、あまり売っていない理由が分かりました。

女性 / 30代 / 東京都 / 購入回数: 1回

 

購入金額は¥228-とかなりの高額 それでも皆さん勘違いされたように、この金額だけどマスクメロンが飲めると思い たまの贅沢品と少しの間開けずにいていざ飲んでみたら、びっくり・がっかり 待つ間期待値も上げてしまったので、がっかり度は尚高く深く… 食品表示法に則って考えるなら、ぶどう>りんご>バナナ>メロンの含有率という事になる そしてまたしてもイメージ写真問題 これは詐欺に抵触しないのかという位ギリギリなのでは? 含有率が一番低いかもしれないメロンを全面に、それ以外の果物をメロンに色味を似せ角度や被写体の面積を小さくし、購入者を如何に騙せるかを目的とするかの如くと言った分かりづらさ 何という不親切 次買いたくなくなるのも致し方なし 味はまあ…とにかく甘い、果物の甘さなのかな メロンの果肉というかスジがあり、これを所謂沈殿物(果肉)と謳っているようだ それだけで食すとメロンの甘味ではなく、青臭さに近い 果肉は一番甘いとこを使わなければダメなんでないかな? その位、果肉を入れるなら重要なものだと思うのだが

女性 / 30代 / 東京都 / 購入回数: 1回

【引用元】キリン まるごと果実感メロンテイスト 900ml(キリンビバレッジ)の口コミ・レビュー、評価点数 | ものログ 

「高級な果物と印象強いメロンで、客を釣ろうとしているのか?」

消費者に商品に対して、こんな疑念を持たせることは企業の信頼を失うことに直結します。

このジュースが措置命令を受けたニュースを見て「もしかして他の商品も…」と思う消費者は少なからずいるでしょう。

 

その事実を理解してか、該当商品は指摘を受けた2022年4月に2020年6月から使用していたパッケージを変更しています。

パッケージの変更点

  • イラストは全面的にメロン ⇒ りんご・ぶどう・メロンを同程度のサイズに
  • 「100% MELON TASTE」 ⇒ 「100% FRUIT JUICE」に変更

パッケージ表示の果実の種類を増やし、フルーツをブレンドしたジュースであることが伝わりやすくなっていますね。

メロンにストローが刺してあるイラストは少々ややこしい気もしますが、以前と比べれば誤解しにくいパッケージでしょう。

キリンホールディングスの広報担当者は「メロンテイストという商品名のため、メロンを押し出す形になっていた。誤解を与え申し訳ない」とコメントした。

【引用元】トロピカーナ「100%メロンテイスト」 実はメロン2% 景表法違反(毎日新聞) – Yahoo!ニュース

一度発生した疑念を完全に払拭するのは、実に困難なことです。人気商品を連ねる企業ですから、ぜひ今後同じことがないように願いたいですね。

9/9 追記

今回措置命令を受けたキリンビバレッジ株式会社は、2022年9月13日に発売予定だった以下の商品を発売中止にすると発表しました。

今回の措置命令を受けて新商品のパッケージも改善する必要ありと判断した、とのことです。

今回の事件への声や意見

日本を代表する飲料メーカーの人気シリーズ商品なこともあり、驚きや怒りの声が上がっています。

すでに飲んだ人の中には「1口飲んでわかった」「フルーツジュースでがっかりした」という感想も…。

一方で「このジュースのメロン味を目当てに定期購入していたので残念」という声もありました。

 

たとえ消費者の多くが気づかなかったとしても、企業の不当表示や過大広告は許されてはいけないもの。美味しく人気な商品だけに、今後もがんばっていってほしいですね。

景品表示法違反は意外と多い?

給油中の車景品表示法違反として指摘される商品・サービスは、残念ながら毎年発生しています。今回は食品でしたが、他にも意外と身近なところで起きているんです。

ここでは、その中から2つの事例をご紹介していきますね。

生活に欠かせない「ガソリンスタンド」で措置命令

1つ目は、2021年12月に起きた多くの人の生活に欠かせない車のガソリンを提供するガソリンスタンド販売会社の違反です。

 

景品表示法違反に該当したのは、ガソリン価格が表示されたガソリンスタンドの看板

レギュラー〇〇円、ハイオク〇〇円と掲げられているのを誰しも一度は見たことがあると思います。

この看板に記載された価格は税抜価格だったのですが、「税別」の文字は小さく隅っこに記載されるのみ。

そのため、車に乗った消費者から視認できず、あたかも「看板の価格が税込である」と思わせるような表示になっていました。

これは、消費者に有利に感じさせるような不当表示(有利誤認)にあたります。当然ダメなので、消費者庁からの措置命令にいたったわけですね。

 

なお、ここ十数年で消費税は何度か上昇していますが、税価格表示に関わる再発防止命令はこの件が初めてだったそうです。

内訳が見えにくい「お葬式」で課徴金納付命令

2つ目は、2020年3月に起きた葬儀サービスを提供する葬儀会社の違反です。こちらは、先ほどよりも重い課徴金納付命令がくだっています。

課徴金納付命令とは

違反をした事業者に対し、課徴金の納付を命じること。

多くの場合は事前に措置命令が出され、弁明の機会を与えられた上で要件を満たした場合に生じるものです。

景品表示法違反に該当したのは、ある葬式プラン。

「家族葬 これっきり価格」と銘打ち、「格安葬儀プラン」「必要なもの全てセット」など自社サイトに記載されたプランでした。

しかし、実際は場合によってドライアイス代や火葬場利用料など追加料金が発生するプランだったんです。

発生するかはケース次第とはいえ、他に費用はかからないと明記されていたのならおかしい話ですよね。

 

また、

「このセットプランは葬儀費用の一部をあらかじめ料金内へ含めたサービスです」

といった表記はあるものの、プラン説明箇所からは離れた場所で同サービスのことを指すと判断しづらいものでした。

表記箇所も念入りに操作して、やっと見つけられる場所にあったようです。

 

これらのことから、消費者庁は該当サービスを不当表示と判断。さらに、明確な防止策などを行わなかったことから課徴金納付命令がくだされました。

対象期間は約1年、課徴金額は417万円。

自主申告や返金による減免があるので全てがこれとは限りませんが、課徴金の金額は商品やサービスの売上×3%とされています。結構大きいですよね。

 

葬儀はただでさえ悲しみに打ちひしがれながらの判断が必要で、さらに考える時間がないことも多いです。

身内だからちゃんと送りたいという気持ちがありつつ、財布とも相談しなければいけない。

そんな時に「〇〇円だけですむセットプラン」と言われたら、誰だって飛びつきたくなります。

生者に寄り添う場であるからこそ、誠実な対応を望みたいものですね。

まとめ

カラフルな果物とジュースたちせっかくお金を出して買った商品が購入時に得ていた情報と合致しないものだったら、すごく残念だし、怒りもわきますよね。

たとえジュース1本でも覚えた違和感は見過ごさず、気になることをスルーしない心がけが日々の生活を守るために有効でしょう。