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【2匹が200匹】2年で自宅を占拠!多頭飼育崩壊でわかるウサギの恐るべき〇〇〇とは

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ペット需要が高まる昨今、安易な気持ちから飼っても面倒をみきれず、飼育放棄する人は後を絶ちません。

今回のニュースも、その1つ。

多頭飼育崩壊はなぜ起きてしまったのか?ウサギの恐るべき○○○とは?

一緒にみていきましょう。

たった2匹が200匹以上に!?わずか2年で30代夫婦の自宅が多頭飼育崩壊現場になった理由

暗い背景に浮かぶ手乗りウサギコロナ禍でペットブームが起きる一方で、知識不足や生き物を飼うことを甘く見ていた人による飼育放棄が問題になっています。

今回起きた出来事も、その一端といえるでしょう。

ウサギが自宅に200匹以上増えてしまった原因は?多頭飼育崩壊は防げなかったのか?詳しく調べてみました。

1件の相談から判明した多頭飼育崩壊

2022年7月初旬、神奈川県動物愛護センターへ1件のSOSが寄せられました。相談したのは、神奈川県県西地域に住む30代の夫婦。

事の発端は、夫婦が2020年8~9月にペットショップでウサギを2匹購入したことから始まります。

2匹一緒に室内飼いをしていたところ、わずか1年で2匹が約100匹まで繁殖。さらに1年たった現在、なんとウサギは200匹以上まで増加!

「飼っているウサギが増えすぎた。自宅をウサギに占拠されています。」

そう、夫婦の自宅では多頭飼育崩壊が起きてしまったんです。

多頭飼育崩壊ってなに?

多頭飼育崩壊とは「ペットが予想以上に繁殖・増加し、飼い主が適正に飼えるキャパを超えてしまった」状況を指します。

多頭飼育崩壊が起きる流れ

  1. 飼い主がペット(オス・メスの両方)を飼う
  2. ペットが自宅で交尾・繁殖する
  3. 増えたペットが飼い主の財布を圧迫
  4. 食事面・衛生面ともに適正な状態を保てなくなる
  5. 増えたペット間でさらに繁殖、頭数が増え続ける
  6. 飼い主が管理しきれず、人間側の生活環境も悪化
  7. どうにもならなくなる

ペットの生態を正しく理解していない飼い主がオス・メスで飼うことで、予想に反したスピードで増えてしまう。

増えた個体が成長して仔を産み、また個体が増え…こうして飼い主の経済状況は著しく悪化。面倒を見切れないまま身動きがとれず、飼育環境が崩壊してしまうんですね。

 

本来であれば適切な医療(去勢・避妊)を受けさせ、むやみに繁殖させないようにするのが飼い主の責任です。

しかし、

「手術なんてかわいそう」「2匹だけじゃ寂しいから」

と感情のまま飼育し、多頭飼育崩壊を引き起こす飼い主が一定数いるのも実情。

多頭飼育崩壊は繁殖力の強い犬や猫で起きるケースが多く、防止策として神奈川県では2019年に多頭飼育届出制度を新設しています。

多頭飼育届出制度を新設しました

平成31年3月、神奈川県動物の愛護及び管理に関する条例が改正され、10頭以上の犬や猫を飼育する場合の届出が新たに義務となりました。

目的

近年、多頭飼育崩壊による犬や猫の引取り事例が増加しています。また、多頭飼育に起因する犬や猫の不適正飼育や騒音、悪臭など近隣の生活環境への悪化による苦情が寄せられています。
そこで、多頭飼育に関する情報を早期に把握し、飼い主支援や指導を行えるよう、届出制度を新設しました。

引用元:多頭飼育届出制度‐神奈川県ホームページ

しかし、今回多頭飼育現場が崩壊してしまったのは「ウサギ」。多頭飼育届出制度の対象外でした。県やボランティアも前例のない状況に混乱しているそうです。

犬や猫と比べて、ウサギはそんなに増えやすい動物なのでしょうか。

知らなかったではすまない!恐るべきウサギの「繁殖力」

結論からいうと、犬や猫の比にならないくらいウサギの繫殖ペースは非常に早いです。

出産可能時期出産周期1度の出産で産まれる頭数
生後4~12ヶ月年2~4回4~8頭
生後6~9ヶ月年2回5~10頭
ウサギ生後約3~8ヶ月年6~8回4~8羽

1頭のメス猫は1年でおよそ20頭になる一方で、1羽のメスウサギは1年で233羽になると言われています。

これはいわゆる「ウサギ算」で健康なオスメス同数が繁殖し続けた場合の数ではありますが、ちょっと想像できない多さですよね。

ウサギ算とは

イタリアの数学者レオナルド=フィボナッチが紹介したフィボナッチ数列のこと。

フィボナッチ数列

「最初と2つ目の数字が1の時、それ以降どの数字も前2つの数字の和」という規則で得られる数列

フィボナッチはこの数列を提起する際にウサギのツガイの問題から考案しているため、うさぎ算とも呼ばれています。

また、ウサギの交尾に必要な時間はわずか30秒。ほんの一瞬目を離した隙に交尾できてしまうため、繁殖を防ぐには生後4ヶ月からオスメス分けて飼う必要があります。

これらのことから犬や猫と比べてウサギは繁殖力が強く、飼い主の知識不足が多頭飼育崩壊を招きやすい動物といえるでしょう。

今回の夫婦は、ウサギの特性を理解しきれずに

  • 最初に買ったウサギに去勢・避妊手術を受けさせなかった
  • 生後4ヶ月になったウサギをオス・メス隔離しなかった
  • 結果、2年で200匹以上まで増えてしまった

と考えられます。

「家族の一員なのに、面倒をみきれず申し訳ない」

こう語る夫婦にウサギに関する正しい知識があったかは不明ですが、飼育管理が不十分だったことは間違いなさそうです。

 

実は、ウサギの多頭飼育崩壊は今回が全国初!というわけではありません。以前から同様の事案は何度か起きています。

滋賀県のとある民家。「家中は牧草で埋もれ、うんちやおしっこがあちらこちらにしてあって、何ともいえない臭いが漂っていました」…ここはウサギの多頭飼育崩壊の現場。昨年5月、保護ボランティアグループをはじめ、近隣住民や個人の保護ボランティアが現場に入り、約130羽のウサギたちを保護しました。体にかまれた傷を負った子や眼球がつぶれ膿(うみ)だらけの子、耳はちぎれて皮膚がただれた子、栄養失調のため痩せ細った子など、けがや病気をしている子がいっぱい…あまりにもひどい現場の様子にショックを受けたボランティアたちも泣きながらウサギたちを保護されたそうです。

引用元:滋賀でウサギ130羽の多頭飼育崩壊 眼球がつぶれ、耳がちぎれた子たちも…ボランティアが見た壮絶な現場‐まいどなニュース

巨大なウサギ観音像が立ち「ウサギ寺」とも言われる新潟県佐渡市の長谷寺が、ウサギの飼育環境が不衛生だと佐渡保健所から改善指導を受け、住職は飼育の継続を断念した。境内にいた40匹以上と、その後に生まれた30匹ほどが関東や関西の協力者に一時引き渡され、飼い主探しが進む。適正飼育に向け、協力の輪が全国に広がっている。

引用元:「ウサギ寺」の70匹、全国へ 改善指導で飼育断念し保護‐サンスポ

飼い主の無責任な飼育のせいで、過酷な環境を強いられてきたウサギたち。

これからどうなってしまうのでしょうか。

崩壊した現場のウサギたちの行く末は

今回夫婦から相談を受けたことにより、同月中に地域管轄の保健福祉事務所を夫婦の自宅を訪問しました。

そこへ一般社団法人アニプロも加わり、8月5日に神奈川県動物愛護センターで約60匹、アニプロで約150匹を保護。

保護されたウサギたちは、それぞれの場所で新しい家族との出会いを待っています。

各問合せ先をまとめたので、気になる人はぜひのぞいてみてくださいね。

神奈川県動物愛護センター

※ウサギの不妊手術など準備が整い次第、譲渡開始予定(8月7日時点で2匹の譲渡情報あり)

アニプロHP

※譲渡希望者は、こちらの飼い主募集応募要項を必ず確認してください

今回のニュースへの声や意見

ペットの飼育は、その命の最初から最後まで面倒をみることが大前提。それを守れなかった典型である多頭飼育崩壊に、さまざまな声や意見があがっています。

猫や犬ほどメジャーではなく、しかし飼いやすさや愛らしい見た目から人気のウサギ。

家族として迎えるからこそ、知識不足の安易な飼育をうまない仕組みが必要だと感じました。

多頭飼育崩壊を防ぐために知っておきたい3つのこと

窓から外をのぞく3羽のウサギSOSが出る頃には取り返しのつかない状態になっていることが多く、ペットにとっても飼い主にとっても不幸しかない多頭飼育崩壊。

未然に防ぐために知っておきたい3つの方法について、まとめました。

去勢・避妊手術を行う

思わぬ出産を招く前に、必ずペットに去勢・避妊手術を行いましょう。

「手術をするなんてかわいそう!」と思いがちですが、手術をすることで発病リスクの低減や予防につながる動物もいます。

去勢・避妊手術が低減・予防につながる疾病

  • 犬:精巣腫瘍・前立腺疾患・乳腺腫瘍・子宮蓄膿症 etc
  • 猫:感染症・精巣の病気・乳腺腫瘍・卵巣・子宮の病気 etc
  • ウサギ:子宮腺癌・卵巣腫瘍・偽妊娠 etc

手術代は動物の種類・性別によって違います。また、お願いする動物病院によっても変わるので、事前に確認しておくと費用を工面できるので安心ですよ。

 

また、去勢・避妊手術で最も重要なのは、タイミング。

多頭飼育崩壊を防げるかは、最初の1匹に適切なタイミングで手術できるかが分水嶺といっても過言ではないでしょう。

適切な時期に去勢・避妊手術を行うためにも、日頃から定期的な受診をこころがけたいですね。

オス・メスで飼わない

ペットとして飼われる多くの動物は、仔を成すためにオス・メス両方の個体が必要です。

手術のタイミングを誤って妊娠させてしまうのが心配…という方は、同性だけで飼うのも1つの手になります。

オス同士・メス同士であれば、少なくとも繁殖してしまう心配はありません。

オス同士だと縄張り意識から喧嘩になりやすいという情報を見かけますが、これも個体によりけりなようです。

 

なお、去勢・避妊手術には発情期など問題行動やストレスの軽減にも効果があります。同性同士で飼うからといって手術をしなくていい理由にはならないので、ご注意ください。

同じ種類の動物を2匹以上飼わない

どんなペットでも1匹だけで飼うなら、「多頭」飼育崩壊のリスクは全くありません。

大好きなペットが2匹以上いる空間は素敵ですが、それ以上にリスクの多い環境でもあります。

多頭飼育のデメリット

  • 飼育や医療に個体分のお金がかかる
  • トイレやエサ場など場所も多くとる
  • 散歩や掃除の手間が倍増
  • 数が多いほど災害時に考えることも多くなる
  • ペット同士で相性が悪いとお互いストレスに
  • 飼い主の愛情の奪い合いが起きることも etc

ペットを飼う資金も自分の生活資金も潤沢にあり、場所にも全く困らない…なんて人は稀ですよね。

自分の身の丈を知り、適正に飼える頭数を把握しておくことはとても大切です。

 

多頭飼育へ憧れる気持ちはよくわかりますが、1匹だけ飼うこともペットを愛するが故の選択と覚えておきたいですね。

まとめ

崖から海を眺める仔ウサギ正しい知識と適正な環境、そして命を預かる覚悟なしでは飼い主もペットも幸せにはなれません。

今回のような多頭飼育崩壊をけして他人事とせず、今一度「ペットを飼う」ことの重さを肝に銘じておきたいところです。