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漫画家の預金2千万円が差押え!?原因は国民年金だった!知っておきたい未納のリスクとは

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生活上で誰もが使う・貯めるを繰り返す「お金」。ある日突然、その大部分が差押えで使えなくなってしまったら…!?

今回の騒動は、実際に「差押え」が起きた1人の男性の発信から始まりました。

差押えはなぜ突然起きたのか?この男性は、なぜ財産を差押えられてしまったのか?

一緒にみていきましょう。

漫画家を突然襲った差押えの原因は国民年金の未納だった!事件の経緯などまとめ

両ポケットを裏返しお金がないことを示してくる男性差押えという言葉、誰もが一度は聞いたことがありますよね。しかし、実際に体験する人はかなり限られるでしょう。

「自分が差押えを受けるなんてありえない。そうなる心当たりもない。」

こう考える多くの人と同じように「心当たりがない」はずの男性に、青天の霹靂ともいえる大事件が起きました。

突然の「サシオサエ」!?旅行中の漫画家の口座に何が起きたのか

事の発端は、とあるツイート。

10月21日早朝、漫画家の小田原ドラゴン(52)さんが自身のTwitterアカウントから

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【引用元画像】小田原ドラゴン(@odawaradoragon)さん / Twitter(当該ツイートは削除済、該当箇所以外は黒塗りにしています)

という驚きの内容が発信されたことから始まりました。

 

小田原ドラゴンさんは、「おやすみなさい。」「チェリーナイツ」など主に週刊ヤングマガジン連載作品で知られる漫画家です。

現在は車中泊で日本一周しながら原稿を書く様子を漫画にした「今夜は車内でおやすみなさい。」が人気を集めています。

これに関連してか、今月20日夜には「これが漫画にする最後の旅」と記した栃木発のツイートを発信していました。写真中央にいるのは、愛犬のちょんぴーさんですね。

しかし、このツイート後のわずか9時間に「サシオサエ」のツイートを発信。同時にご本人の入出金口座記録が公開されました。

その画像には、間違いなく「サシオサエ」で2千万近く出金された記録が…。

 

該当ツイート直後、本人のアカウントには

「どうすればいいいのか教えてください」
「(旅行中ですが)一旦帰ります」

など連続でツイートされ、非常に動揺している様子が見てとれます。

 

その様子をみたフォロワーや、ツイートを見かけた人からは

「銀行のミスはないので、知らぬ間に訴訟→敗訴したのでは」
「まずは落ち着いて銀行へ確認を」
「郵便物を急いで確認して!」

など、考えうる可能性や行動案をリプ欄へ投稿。小田原ドラゴンさんも急ぎ銀行へ連絡をとったようです。

そして、およそ3時間経った頃に銀行から連絡があり、事態の原因が判明。とりあえず事なきをえたツイートが発信されました。

 

一漫画家に起きた差押えという穏やかではない状況に、Twitter内では一時「差押え」などのワードがトレンド入り。

預貯金が急にゼロになったようなものですから、ざわつくのも仕方がないといえるでしょう。

一体、何が原因で今回の事態が起きてしまったのでしょうか。

「サシオサエ」の原因は国民年金の未納だった

結論からいうと、小田原ドラゴンさんに起きた差押えは「国民年金を未納していた」ことが原因でした。

銀行からの連絡で「年金事務所による差押え」であることがわかり、腑におちたという小田原ドラゴンさん。国民年金の未納は、本人自覚の上で行われたことだったようです。

 

日本国内に住む20才以上60才未満の人には、国民年金の加入が義務付けられています。(条件によって猶予・減免あり)

企業勤めの多くの人は給与から引かれますが、自営業やフリーランスの人は自発的に納めなければいけません。

小田原ドラゴンさんはフリーランスや漫画家として働く直近20年ほどの間、最初の数回以降払わなかったそうです。

「正直、年金問題などの報道を見たり、政府の無駄使いや嘘を報道で見るたびに政府への不信感がありました。こんなこと言ったらダメだけど、国がやってる年金のことはなんとなく億劫で払いたくないという思いがあった」

【引用元】突然2130万円が“サシオサエ”された人気漫画家が告白「年金事務所からの封筒は溜まったら捨てていた」年金未納が原因|NEWSポストセブン – Part 2

どんな事情があったにせよ、20年もの間支払い能力があるのに払わない選択をしたのであれば差押えは当然の結果だったのでしょう。

 

しかし、ここで気になる点が1つ浮上してきます。

差押えは突然やってくる?意外と手順の多い差押えまでの流れ

小田原ドラゴンさんは該当ツイートで「突然」差押えられたといった内容を発信していました。

国民年金未納による差押えは、本人の預かり知らぬところで突然起きるものなのでしょうか。

 

結論から言ってしまうと、答えは「NO」。国民年金未納による差押えは、多くの手順を踏んだ上で実行されます。

国民年金未納・滞納の人に起きること

  1. 電話や書面で催促がくる
  2. 特別催告状(青)が届く
  3. 特別催告状(黄)が届く
  4. 特別催告状(赤)が届く
  5. 最終催告状が届く
  6. 督促状が届く
  7. 差押え通知書が届く
  8. 差押えが行われる

まず最初に行われるのが、納付督励です。

納付督励(のうふとくれい)とは

行政が未納・滞納者へ自主納付を促すよう指導する行為。

対象の個人または事業者に対し、各年金事務所から電話や書面で来所を促すほか、直接訪問して早期納付について知らせてきます。

2022年10月より、電話による行政指導の一部業務を厚生年金保険料等納入コールセンターへ移管したそうです。

そのため、コールセンターから電話が来る場合もあります。

今回の小田原ドラゴンさんの件でも、差押えされる6~7年ほど前に年金事務所から電話が入っていたようです。しかし、そのタイミングで未納分の納付は行われませんでした。

 

電話や文書による行政指導を無視しつづけた場合、次は特別催告状が届きはじめます。

特別催告状は、青→黄→赤の3色。

「未納・滞納状況が深刻である」
「将来的に差押えもありうる」

上記を示す厳しい文言とともに、後半になるほど警告度が上がっていきます。

この特別催告状までが納付督励なので、ここまでに納める(or減免など手続きをする)のがベストですが…。

小田原ドラゴンさんは車中泊で原稿作業をされていたので、届いた郵便物に気づけなかったのかもしれませんね。

 

特別催告状をも無視しつづけると、行政はいよいよ差押えの段階へ踏み込みます。

まず最終催告状(国民年金未納保険料納付勧奨通知書)が届きますが、これは最後の納付督励です。この最終催告状の期限までに支払えば、まだセーフ。

国民年金未納保険料納付勧奨通知書は、

年間所得300万円以上かつ7ヶ月以上滞納している

ことを日本年金機構が確認できた人にのみ、送付されます。

ただし、上記条件を満たさない場合でも差押えを受ける可能性はゼロではありません。

しかし、期限までに払わなかった場合は督促状が届きます。これは納付督励ではなく「強制徴収」です。

強制徴収とは

国や地方公共団体が、公債権を滞納処分など経て強制的に取り立てる行為。

督促状は未納・滞納者個人のみならず、世帯主など家族にも届きます。届く=支払義務が生じているので、誰であっても納めないと差押えの対象になるので注意が必要です。

これも小田原ドラゴンさんの自宅に届いていたはずですね。

 

さらに督促状にも何のリアクションもしないでいると、とうとう差押予告通知書が届いてしまいます。

これは、滞納者の現時点での財産を日本年金機構が調査した上で送付されるものです。

「これだけ財産があることがわかっています。滞納分として、差押えますね」

という事前予告になります。

この事前予告(差押予告通知書)なしに、差押えが行われるケースもあるようです。

そして、事前予告後は、特に知らせもなく差押えが執行されます。

差押えの対象になるもの

  • 給料
  • 預貯金・有価証券
  • 自動車
  • 自宅・土地・建物など不動産
  • 生活必需品を除いた財産
  • (世帯主・配偶者など家族がいる場合)家族の財産 etc

給与を差し押さえる場合は給与支払先へ、預貯金を差し押さえる場合は該当の金融機関へ差押通知書が送付されます。

小田原ドラゴンさんの「サシオサエ」は、預貯金を管理するみずほ銀行へこの通知書が届いたことで処理されたのでしょうね。

ツイートでは預貯金に対する話題のみでしたが、もしかしたら他の動産・不動産も同じく差押えを受けているかもしれません。

 

なお、預貯金を差し押さえる場合、差押えが執行された時点での預貯金全額が対象になります。

(取立ての範囲)

2 債権を差し押さえたときは、差押えに係る国税の額にかかわらず、被差押債権の全額を取り立てるものとする(法第67条第1項)。

【引用元】第67条関係 差し押さえた債権の取立て|国税庁

滞納額に関わらず全額を差し押さえるので、預貯金残高によっては大変高額なお金が動かせなくなるケースも。小田原ドラゴンさんは、まさに後者に当てはまるのでしょう。

仮に国民年金の未納を20年続け、延滞金は加算されたとしても2千万円は超えないはずですからね。

 

以上のことから、国民年金未納・滞納に対する差押えが「突然」起きることは皆無といって差し支えないでしょう。

小田原ドラゴンさんの元に届いていたであろう特別催告状や督促状は、もしかしたら車中泊旅で見落としていたのかもしれませんね。

 

なんにせよ、差押えられた財産は未納・滞納・延滞分を完済しない限り手元に戻ることはありません。

本人にしてみれば青天の霹靂かもしれませんが、今後は真摯な対応が必要になるでしょう。

今回の事件への声や意見

漫画家という人目のつきやすい職業が差押えを受けたこともあり、最初は驚きの声が多く上がりました。

しかし、徐々に状況が明らかになってくると

「差押えは突然来ない」
「払えないなら早急に手続きすべきだった」
「年金未納で逃げきれるなど国を舐めない方がよい」

などの声が強まってきた印象です。

国民年金の加入は、国民の義務。年金保険料未納のツケからは、けして逃れられないということを心に留めておくべきでしょう。

国民年金は納めるべき?延滞金は?未納・滞納のリスクを理解しておこう

税務署の前に立つ天秤を掲げる女神像2022年2月末時点で22.7%…およそ4人に1人が国民年金未納である今、

「国民年金保険料を払っていない人がそんなにいるなら、自分も払わなくていいのでは?」

そう考える人も少なからずいると思います。しかし、その選択は絶対にオススメできません。

今回の小田原ドラゴンさんの件では預貯金全額差押えが話題になりましたが、未納・滞納によるリスクはそれだけではないんです。

国民年金を未納・滞納すると起きること

  • 財産の差押え
  • 延滞金の加算
  • 将来受け取る年金額の減少
  • 老齢年金がゼロになる可能性がある
  • 障害年金・遺族年金を受給できない可能性がある
  • 追納が間に合わない可能性が出てくる

財産の差押えについては前述のとおりですが、滞納期間にあわせて加算される延滞金が実は非常に重いんです。

延滞金の割合は早く返済するほど低く、返済日が遅いほど高くなるように設定されています。当然といえば当然ですよね。

期間延滞税特例基準割合(※)延滞金の割合A
(納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日まで)
延滞金の割合B
(納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日の翌日以降)
平成21年12月31日まで14.6%14.6%
平成22年1月1日から平成26年12月31日4.3%4.3%14.6%
平成27年1月1日から平成27年12月31日1.8%2.8%9.1%
平成28年1月1日から平成28年12月31日1.8%2.8%9.1%
平成29年1月1日から平成29年12月31日1.7%2.7%9.0%
平成30年1月1日から平成30年12月31日1.6%2.6%8.9%
平成31年1月1日から令和元年12月31日1.6%2.6%8.9%
令和2年1月1日から令和2年12月31日1.6%2.6%8.9%
令和3年1月1日から令和3年12月31日1.5%2.5%8.8%
令和4年1月1日から令和4年12月31日1.4%2.4%8.7%

【引用元】延滞金について|日本年金機構

そのため、完済までの期間が伸びるほど、後の自分を苦しめることにつながります。

国民年金など税金は自己破産の免責対象外なので、積もりに積もったツケから逃れる手段はないんです。

 

また、年金の未納期間によっては、そもそも老齢年金や障害年金・遺族年金を受け取れない可能性があります。

年金にはそれぞれ受給要件があり、それを満たさないと受給することができません。

各年金の受給要件(保険料納付に関わる部分のみ)

  • 老齢基礎年金:保険料納付期間と免除期間の合計が10年以上
  • 障害基礎年金:初診日前日or初診日月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付期間と免除期間の合計が2/3以上
  • 遺族基礎年金:死亡日前日時点で保険料納付期間と免除期間の合計が加入期間の2/3以上

そして、未納・滞納を解消しようと後から追納したくても、さかのぼれるのは10年分のみ。受給要件はクリアできたとしても、減額はまぬがれません。

国民年金保険料を未納・滞納すると財産を差押えられる上に、老後もらえる年金も減る可能性が…。

年金制度への不安などあるかもしれませんが、今の自分を守るためにも国民年金保険料は確実に払っておく方が賢明ですね。

 

払える人は確実に納付を、今払えない人は必要な手続きをきちんと進めておきましょう。

国民年金には学生や少所得者、失業者、障害者などさまざまな事情で一定の収入が見込めない人が利用できる免除制度が存在します。

もし免除対象でなかったとしても、分割払いの相談に応じてくれる場合もありますよ。

支払に不安がある人は、近くの年金事務所や自治体の国民年金窓口へ行ってみてください。抱え込まずに、まずは相談することが大切です。

まとめ

税金を回収していく男性2人組国民の義務である国民年金保険料の納付を怠った時、そのリスクを最も被るのは怠った本人です。

そして、場合によっては家族まで巻き込み、大きな負担を強いることも十分考えられます。

たとえ相手が国だとしても、真摯・誠実に対応することが大切しなければ確実にそのツケは回ってくる。そう感じさせられる出来事でした。